特集|経済・ビジネス

Vol. 1

就活人気復活「5大商社」 慶應大卒「若手社員」が語る“商社ライフ”のリアル

2026年7月13日


<span>就活人気復活「5大商社」 慶應大卒「若手社員」が語る“商社ライフ”のリアル</span>
就職するなら「コンサルより商社?」

日本経済が停滞した「失われた30年」でビジネスモデルを激変させて急成長を遂げ、「ホルムズ海峡封鎖」にも動じない、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事の5大商社。専門家や現役社員の証言を重ね合わせることで、その“強さ”の秘密を探りたい。

資本効率改善の裏にバフェット氏の存在

  最近の日本の株式市場の主役といえばやはり、AI・半導体関連株である。半導体メモリ大手「キオクシアホールディングス」の株価は、2024年末の上場時の50倍超の水準にまで上がった。そんな「バブル」のごとき狂騒とは裏腹に、低迷しているのが総合商社の株価だ。「5大商社」の中では、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅はいずれも下げトレンドとなっており、住友商事は決算発表後に急騰したものの、現在はその前の水準に戻りつつある。とはいえ、商社の“稼ぐ力”に陰りが見えているわけではなく、

「ここ最近、5大商社の一部は当期純利益が1兆円の大台に乗ろうとしていることで注目を集めています。三菱商事は今年度に当期純利益1兆1000億円の利益計画を、三井物産は28年度に1兆1000億円を目指す方針を中期経営計画で掲げています」

 そう語るのは、総合商社の専門誌『週刊ブレーンズ』編集長の小淵良樹氏だ。

「さらに注目されるのは、両社とも1兆円の利益達成を一つの通過点と位置付け、その先を見据えた利益目標を掲げている点です。三井物産は『中期経営計画2029』で30年の当期純利益1兆4000億円超を、三菱商事も『Investor Day 2026』(26年6月3日開催)で30年度のイメージとして同1兆5000億円超を掲げており、利益目標の水準は一段と切り上がっています。両社は、1兆円を大きく上回る利益水準の実現を競う段階に入ったと言えます」

 もっとも、コロナ禍からの需要回復や、ロシア・ウクライナ情勢に起因する資源・エネルギー価格の高騰で、22年度には三菱と三井は総合商社初の「純利益1兆円」を達成してはいる。

「しかし、一時的な市況要因への依存度が高かった当時に対して、今回の『1兆円』は、その質が異なる。既存事業の収益力強化や資源系を中心とした大型投資案件の利益貢献開始に加え、低採算事業の売却などによる資産の入れ替えが加速したことで、収益基盤そのものが底上げされているのです」(同)

 そんな総合商社の収益力を高く評価してきたのが、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いてきた投資会社「バークシャー・ハサウェイ」である。同社が5大商社の株式の約5%を保有している、と発表したのは20年8月。その後も買い増しを続け、現在の保有比率は10%前後となっている。

「最近の5大商社の飛躍を語る上で、バフェットさんによる巨額の出資は非常に大きいと思います。彼は一般に投資先の経営に深く関与する投資スタイルではないとされますが、世界最高の投資家として、出資先に厳しくリターンを求めてくるのは当然でしょう」(同)

 近年の5大商社で、低採算事業の売却などを通して「資産の入れ替え」が行われていることは先述した通りである。例えば、住友がマダガスカルで推進してきたニッケル開発プロジェクト「アンバトビー」や、三菱の「日本ケンタッキー・フライド・チキン」、丸紅の「ガビロン」などだ。

「以前なら社内の反発があって売却できなかった収益性の乏しい大型事業も、ためらうことなく売却して“膿を出す”ことができているのです。コロナ禍以降、5大商社の経営陣が資本効率を意識してこうした果断な措置がとれている背景には、バフェットさんの存在がある。総合商社に自律的な経営改革を促す力学を、彼が作用させている、と見ることもできます」(同)

1990年代の「商社不要論」

 総合商社のビジネスモデルは1990年代後半以降、口銭(手数料)を稼ぐ「売買仲介型」から、「事業投資型」へと大きく変わった。

 三井物産元社員で『ふしぎな総合商社』(講談社+α新書)の著者、小林敬幸氏はこう話す。

「商社が行う事業投資は資金だけではなく人も出して経営に関与するので、投資銀行とは違う。結局、総合商社という業態自体が世界的に見て類例がなく、資源開発、コンビニ、輸入など、バラバラに列挙するしかないのです。全体としては対応する業態がないため、海外では『SOGO SHOSHA』と紹介されることもあります」

 意外と見過ごされがちなのは、総合商社が急成長したのはバブル崩壊後、という事実である。

「バブルが崩壊した後、96年から00年の5年間の5大商社の純利益平均額はゼロに近い赤字でした。しかし01年以降急成長し、07年からは2000億円を超えました。驚くべきことにトップ1社だけではなく、5社平均でそれを達成しているのです。それだけの短期間で純利益が赤字から2000億円台に到達するなど、シリコンバレーの企業群でも例がありません」(同)

 なぜ商社だけが復活を遂げられたのか。そこにはいくつかの要因がある。

「一つは、社員の強烈な危機意識でしょう。90年代に三菱商事に就職した人は当時を振り返り、『あの時は皆がこのままでは5年先に会社が潰れると真剣に思っていた。その危機感は新入社員にもビンビン伝わってきた』と言っていました。業界トップの三菱ですらそこまで追い込まれていたのです」(同)

 当時、経済のグローバル化などの影響でメーカーが海外と直接取引するようになり、「商社不要論」が巻き起こっていた。そんな中、稼ぐ方法が「売買仲介型」から「事業投資型」へと変わっていくにつれ、

「業績の評価指標も売上高から連結純利益に変わりました。売買仲介型だった頃は本質的には意味のない売上高競争に走っていましたが、次第に子会社からの配当収入や持ち株の評価益、株式の売却益などで儲けるようになり、連結純利益が重視されるようになったわけです。結果、“その投資はいくらの価値を生み出すのか”という本質的な問いに意識を向けざるを得なくなったのです」(同)

 それだけではない。

「商社の“戦略なき戦略”がプラスに働いた面もあるでしょう。商社の事業や業態はあまりに多岐にわたるし、やることが大きく変化してきているので、元々成長戦略やビジョンを語るには適合していない、とも言えます。しかし、その融通無碍に変化して生き延びる性質こそ、商社の本質なのかもしれません」(同)

「バリバリ仕事して週末はクラブと合コン」の精神は健在

「商社不要論」が叫ばれた当時は学生からの就職人気も落ち込み、トップ10の常連から転落した。しかしその後、ビジネスモデルの“脱皮”に成功し、急成長を成し遂げたことで学生人気も復活した。

 5大商社の一角、丸紅のある若手男性社員によると、

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