連載|経済・ビジネス

高市政権「積極財政路線」の追い風となり得る“新たな自由主義”は広まるか

2026年7月8日


<span>高市政権「積極財政路線」の追い風となり得る“新たな自由主義”は広まるか</span>
r2hox from Madrid, Spain, CC BY-SA 2.0 , ウィキメディア・コモンズ経由で

高市政権の掲げる「責任ある積極財政」。その一端が、ラピダスをはじめとする半導体分野への積極的な財政支援だろう。こうした政府による特定の産業分野への財政資源投入は「産業政策」と呼ばれるが、かつての経済学界では否定的な意見が多勢を占めていたという。そこに起きた経済学の新たな潮流と、世界大戦後のケインズ経済学への反芻が、新しい自由主義を考えるヒントになると、小林慶一郎氏は指摘する。

財政と経済成長の関係

 連載の第2回では、いったん自由主義から離れ、話題を「財政と経済成長」に変えてみよう。高市早苗政権の現在の日本の経済政策も、積極財政による経済成長を目指しているが、それは世界の経済関係の文脈からどのように見えるだろうか。

 この10年ほど、経済学や経済政策の分野では、政府の財政政策によって経済成長を実現しようという考えが広がってきた。典型的なのは、政府の財政資源を特定の産業に投入し、その産業の成長を促すという「産業政策」を重視する考えがかなり市民権を得てきたことである。戦後から高度成長期にかけて日本が行った政策として有名である。

 この産業政策は、経済学界ではあまりメジャーな話題となることもなく忘れられていた。ところが、最近では2000年代以降の中国経済の興隆に関連づけ、「中国の急成長は産業政策の効果によるもの」、といった研究が中国の経済学者などから多数発表されるようになった。

 こうした動きに触発され、欧米先進国やIMFなどの国際機関でも産業政策に対する関心が高まり、研究論文や調査報告書が多数発表されている。ここ数年の欧米や日本の半導体産業への支援策は典型的な産業政策であり、現実の政策の世界では、産業政策の復権は著しい。ただ、IMFなど欧米研究者のレポートには、産業政策の有益性について極めて慎重な(否定的な)見解が記されている。

「産業政策」の復権

 しかし最近になり、産業政策、または、積極財政による経済成長を目指す政策について肯定的な意見が欧米経済学界でも出るようになってきた。たとえば、スペインのポンペウ・ファブラ大学のルカ・フォルナロ兼任教授とスイスのザンクトガレン大学のマーティン・ウルフ准教授は、2025年の論文で、積極財政が企業の生産性や経済成長率を引き上げる効果を持つことを指摘している(正確には、本人たちの研究ではなく、他の研究者たちの実証研究を引用するかたちで述べている)。

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