経済・ビジネス

半導体「中国封じ込め」に舵を切ったアメリカ

2021年3月29日


<span>半導体「中国封じ込め」に舵を切ったアメリカ</span>

世界は「米中冷戦」の時代に本格的に突入した。かつての米ソ冷戦が東西陣営への地理的分断と軍事対立が特徴だったのに対し、米中新冷戦はサイバー空間と産業競争が戦いの主舞台だ。米国、欧州、日本など主要国が最先端の製品や技術、生産設備の中国への供給や移転を厳しく制限、中国に流出した生産基盤の国内回帰と再強化を図ろうとする一方、中国は国内市場と一帯一路で成長を図る「双循環」政策で対抗する。米中冷戦は世界の産業地図、サプライチェーンをどう変えるのか。世界を揺さぶる半導体から冷戦の実相をみる。

 2021年3月23日は米国半導体産業の歴史に「反転攻勢の日」として刻まれるかもしれない。インテルのCEO(最高経営責任者)に就任したばかりのパット・ゲルシンガー氏は「200億ドル(約2兆1600億円)超を投資する2つの新工場建設」と「独立したファウンドリー(半導体の受託生産)事業の開始」を柱とする「IDM(Integrated Device Manufacturer=垂直統合型メーカー)2.0」を宣言したからだ。「IDM2.0」とは何か、を知るにはインテルが置かれた状況をみる必要がある。

 言うまでもなくインテルは米国の半導体産業を築き上げた企業のひとつであり、IC Insightsの集計では2020年も売上高738億ドル(約8兆円)で世界の半導体業界のトップに君臨する。パソコン用CPUなどロジック半導体の開発設計から生産を一貫して自社で手がけるIDMの代表企業。

 だが、この数年は存亡の危機に見舞われてきた。主戦場であるロジック半導体の技術水準を示す回路線幅で、台湾のTSMC、韓国のサムスン電子が実用化した10ナノメートル、7ナノメートルのハードルを越えるのに手こずり、両社から1歩から1.5歩後れ、重要な顧客を失い、一部では「半導体の主要な生産工程から撤退し、TSMCなどに生産を委託するファブレス(工場なき)メーカーに転じる」との観測も出ていた。

インテルのCEOが強調「メーカーであり続ける」ことの意味

 ゲルシンガーCEOは今回、「10ナノ、7ナノの躓きは解消した。インテルはメーカーであり続ける」と強調した。インテルの「IDM2.0」宣言が大きな意味を持つのは、世界の半導体生産の80%が台湾、韓国、日本、中国、シンガポールなどアジアに集中しているためだ。2020年の半導体メーカーランキングでは上位15社中8社を米国企業が占めるが、インテルとマイクロン、テキサス・インスツルメンツ(TI)以外は開発設計主体で、実際の生産は台湾、韓国、シンガポールのメーカーに委託するファブレス業態。スマホ向けなど通信に強いクアルコム、グラフィックスや高速処理に強いNVIDIA、コスト競争力の高いCPUなどを持つAMDなど有力メーカーは自社では生産しない。米国の半導体産業で今なお工場を維持し、生産技術を磨きながら生き残った数少ないIDMがインテルだった。……

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