ロシアがウクライナ国境近くに大規模な軍を展開し圧力を高めていることから、ロシアとウクライナの間の、そしてウクライナを支援する欧米との間の緊張が大きく高まっている。ロシアによるウクライナ軍事侵攻があるのではないか、との深刻な懸念も生まれ、侵攻を抑止し、軍事衝突発生を回避するための外交的取り組みも欧米とロシアの間を中心に活発に行われている。米ロ首脳間、あるいは外交トップの間なども含め様々なチャネルで対話・意見交換が実施されているが、現時点では事態打開の糸口は見えていない。
NATO(北大西洋条約機構)の東方不拡大の法的保証を求めているウラジーミル・プーチン大統領は、米欧からの回答に対して、「ロシアの根本的懸念が無視されている」との趣旨の発言を行い、不満を表明している。その後も、問題解決に向けた対話のチャネルが閉ざされたわけではないが、事態は膠着状態にあり、軍事侵攻の可能性も含め、ウクライナ情勢は高い緊張が続いている。
原油以上にダメージを与える欧州のガス価格高騰
この地政学リスクが国際エネルギー市場を揺さぶっている。昨年12月以降、原油価格は上がり続けてきたが、1月末から2月にかけてさらに上昇、指標原油WTIの先物価格はついに90ドルを突破した。世界の石油在庫が低水準に止まる需給逼迫下で、今後のOPECプラスの増産が順調に進むかどうかの懸念が価格押し上げにつながっているが、それ以上に重要なのはやはりウクライナ情勢緊迫による地政学リスクの影響である。
ロシアは欧州向けを中心とした石油の大輸出国であり、軍事侵攻が発生するようなリスク事象が現実化した場合、ロシアの石油供給がどうなるか読み切れないとの不安要因が先物市場での買いを呼んでいる。不測の事態発生の場合には100ドルを超えるとの見方も示されるようになっている。コロナ禍からの回復過程にある世界経済にとって、原油価格のさらなる高騰と石油市場の不安定化は深刻な負の影響を及ぼしかねない懸念材料である。……