誰かと交際しようとする際、「互いが他の人を好きになったときに、どうするか」について、あらかじめ話し合う人は、どれくらいいるだろうか。
多くのカップルは、そんなことをわざわざ口頭や文書で確認しないだろう。なぜ、確認しないのか。それは、「恋愛というのは、一対一で行うもの」「パートナーはひとりだけにする」という考えが、現在の社会では相当に広がっているためである。そして誰かと交際をするときには、おそらく相手もおなじような考えを持っているだろうと、暗黙のうちに想定しているためでもある。
こうした価値観は、モノ規範と呼ばれる。モノはギリシア語で「単数」を意味する言葉だ。つまりモノ規範とは、「恋愛は単数の相手とのみ行うべきだ」という社会通念のことだ。
とはいえパートナー以外の人に惹かれることや、同時期に複数の人に惹かれること自体は、珍しいことではないだろう。ただ、モノ規範を前提として交際している人々は、互いにその感情を(少なくとも表向きは)抑制しようとする。……