<span>教養から興味へ――AIで「主観化」した社会はどこに向かうのか</span>
AIは教育を根底から変える力を持つ 写真:Stokkete/shutterstock.com

無料オンライン学習プラットフォーム「カーン・アカデミー」がサム・アルトマンらの支援を受けて開発したAIチューター「Khanmigo」。2023年のリリース時にはAI技術の先進的な活用例として大きな注目を浴びた。それから3年、いまやAIを教育現場で利用することは決して珍しいことではない。急速に社会実装されていくAIは、教育環境やキャリアパスにとどまらず、人間関係や価値観までも変容させつつある。AI技術は我々の社会に何をもたらすのか、作家の橘玲氏に聞いた。

「カーン・アカデミー」に見る教育格差

 学校教育の問題は、生徒の学力のばらつきを無視して、全員が平均的な学力をもっていると前提していることです。しかし誰もが知っているように、学力は偏差値50を中心にベルカーブを描き、どのクラスにも平均よりかなり学力が高い子どもも、逆に学力が低い子どもも一定数います。その結果、上位層は授業に退屈し、逆に下位層は授業についていけず脱落してしまう。これは日本だけでなく、世界中のすべての学校教育が抱える構造的な問題です。

 それでは、脱落してしまう子どもをどうすればいいのか。1984年、心理学者のベンジャミン・ブルームは、のちに「2シグマ問題」と呼ばれるようになる衝撃的な研究結果を発表しました。その研究によると、1対1の個別指導を受けた生徒の成績が、従来の集団学習を行った生徒の98%を上回ったというのです。これは2標準偏差(2シグマ)の成績向上に相当し、1標準偏差は偏差値で言えば10なので、偏差値50の生徒が個別指導によって偏差値70になったことに等しい、とてつもなく大きな成果です。

 その後の検証でも、ここまで大きなちがいはなかったものの、個別学習の効果は一貫して示されています。しかし学校では、1人の教師が30人~40人の生徒を相手にせざるを得ないので、このような個別指導は不可能です。結局は、経済的余裕のある家庭が個別に家庭教師などをつけ、低所得家庭の子どもが放置されるということになってしまいます。

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