『人はなぜ特攻に感動するのか』は、教育社会学者の井上義和氏とライターの坂元希美氏が、古今東西の“特攻映画”が人を感動させるメカニズムについて語り合った対談本だ。文筆家で戦中派に関する著作もある読売新聞の前田啓介記者による書評。
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いつものようにぼんやりとニュース番組を見ていた3月初めのある夜のことだ。スポーツコーナーでは、間も無くはじまるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)について、メジャーリーグでも活躍した元有名プロ野球選手が、中継先からあるアメリカの選手を「愛国心の強い選手だ」と紹介していた。その時スタジオのニュースキャスター氏の表情はワイプの中で、職業的愛想笑いも浮かべず静止画のように固まったままだった。思いがけず発せられた「愛国心」という言葉に、ニュースキャスター氏は完全にフリーズしてしまったように見えた。この国のある層にとっては、愛国心は禁句とまでは言わなくても、抵抗感は強いのだろう。
この日から10日ほど経った夜、今度はしっかりとあるドキュメンタリ―番組を観ていた。NHKスペシャル「原発事故 埋もれた封じ込め作戦」は、2011年3月の東日本大震災での福島第一原発事故の処理を巡って準備された極秘作戦の実態を明らかにしようとしていた。その作戦というのは、爆発した原子炉に大量の砂や水、ドロマイトを投入し放射性物質を封じ込めるというチェルノブイリ原発事故で行われた「石棺」を参考にしたものだった。問題は、その危険極まる作業を誰が現場でやるか。番組のホームページに記された言葉をそのまま使うなら、「最大の課題となったのは『誰が命を懸けるのか』」だった。……