社会

コメ作りで広がる「一発肥料」「乾田直播」 農水省「みどり戦略」の大問題

2026年5月21日


<span>コメ作りで広がる「一発肥料」「乾田直播」 農水省「みどり戦略」の大問題</span>
乾いた田に種を播く「乾田直播」

 農水省は数年前から有機農業拡大が必要だとして「みどりの食料システム戦略」(みどり戦略)を進めている。が、現場では、「有機」とは相容れない「一発肥料」や「乾田直播」が広まっているのだ。そんな現状を、ノンフィクション作家の奥野修司氏がレポートする。

※本稿は「週刊新潮」2026年5月21日号の特別読物【コメ作りで広がる「一発肥料」「乾田直播」 農水省「みどり戦略」の大問題】の一部を再編集したものです。

令和の米騒動の一因になった「一発肥料」

 「一発肥料」をご存じだろうか? 実にインパクトのあるネーミングだが、これを田畑に撒けば一発で効果があらわれるというすぐれた肥料のことである。

 米の栽培に「追肥(ついひ)」という作業がある。田植えをすると、やがて稲穂の赤ちゃん(幼穂)が茎の中に誕生する。この時期の稲は栄養をたくさん必要とするため、肥料を追加するのだ。たいてい7月の暑い日の作業なので、高齢の農家には重労働だった。一発肥料はそれを軽減するために使われているという。

 一発肥料は、プラスチックの殻に肥料を詰めた小さなビーズのようで、田植え時に苗の根元に撒けば、放っておいても追肥の時期になると殻から肥料が溶け出してくる。まるで時限爆弾のような肥料だが、米農家にとっては「夢のような肥料」なのである。

 すでに8割とも9割ともいわれる農家が使っていて、もはや一発肥料なしで米作りは成り立たないとの声もある。たしかに便利な肥料なのだが、便利さゆえに問題も多いのだ。

 例えば、「令和の米騒動」にも一発肥料が関係しているのである。2023年、24年と米の需要見通しに対して生産量が不足して米価が高騰したことは記憶に新しいが、農水省はその原因として、異常気象による高温障害のため精米したあとの歩留まりが悪く、生産量が減少したことをあげた。だが、関東北部で米農家をしている筆者の知人はこういう。

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