「費用対効果」という逃れようのないロジック
「私がキーエンスの研究を始めたきっかけは、90年代から経営学者の間で『すごい会社がある』と噂になっていたからです。実際、この会社の企業構造には弱点が見当たりません。40%を超える営業利益率を25年以上にわたって達成し続けている企業は世界的にも極めて稀です」(延岡氏、以下同)
キーエンスは、工場の自動化に欠かせない制御機器などの生産財を開発、販売している。
「生産財におけるニーズとは、究極的には『顧客企業がいかにコストダウンできるか』『顧客企業がいかに利益をあげられるか』という、具体的な経済的価値以外にありえません。世の中の多くの企業は『お客さまの価値』を目標にした経営ができていないのです。キーエンスは粗利率8割を目安にするので、原価が20万円の商品を100万円で売ります。これを聞いて『ぼったくりだ』と思うでしょうか。そうではありません。なぜ100万円で売れるのか。そこには『費用対効果』という、逃れようのないロジックがあるからです」
100万円の生産財を購入した企業があったとする。その企業に「この商品を買うことでウチはいくら利益が出るのか?」と聞かれた時、多くの会社はうまく答えられない。ほとんどの場合、「便利だから」「高機能だから」というあいまいな理由で売っているからだ。
「しかし、キーエンスは違います。キーエンスの営業担当者ならこう答えるでしょう。『今、御社のこの工程には100時間かかっています。弊社のこの製品を導入すれば、それが50時間に短縮されます。人件費や稼働率を計算すれば、これだけのメリットが生まれます。ですから100万円払っても、十分なリターンが見込めます』。ここまで論理的に顧客企業側が『儲かる』と証明されれば、顧客は『買ってあげる』ではなく『すぐに持ってきてくれ』となります」
一流のコンサルタントは「アート思考」で提案する
キーエンスが提供しているのは単なる「モノ(商品の機能・スペック)ではなく「コト(体験・成果)」。つまり、顧客の業績を上げるためのソリューションである。