カルチャー

馮道――無節操の時代(上)

2021年7月10日


<span>馮道――無節操の時代(上)</span>
馮道(右)は、李存勗(後唐の荘宗=左)に仕えたことが生涯の転機になった

礼・義・廉・恥こそ、国を維持する四大モラルだ。これをさかんにしないと、国が滅亡する。礼・義とは人々を治めてゆく大法であり、廉・恥は人々を成り立たせる大節だ。まして大臣でありながら廉・恥がなくては、乱れぬ天下はなかろうし、亡ばぬ国家もないだろう。馮道の自叙伝を読んで、その自画自賛ぶりにあきれた。これを廉・恥なし、というのであって、当時の天下・国家がどうなったかも、これで火を見るより明らかだ。(『資治通鑑』卷二九一)

 以上は今からおよそ一千年前、欧陽脩が記した人物評である。欧陽脩といっても、現代日本人はよく知らないかもしれない。しかしつい百年前は「唐宋八大家」といって、漢文漢学を習う人なら、知らぬ人のいない文豪だった。かれの文章をテキストにして、和漢の読み書きをマスターしたからである。

 文豪というだけではない。副宰相の地位にまでのぼり、世上の非難を一身に引き受けようとの覚悟を口にした大政治家でもある。そんな人物が破廉恥だと口を極めて非難したのが、前代のやはり宰相の馮道(ふうどう)という人物だった。

 欧陽脩は歴史家でもあって、その手になった『新唐書』『五代史記(新五代史)』などは、今も残る基本的な史書・史料である。馮道とは百年くらい隔たっているので、ちょうどわれわれが近代史・明治時代の政治家をみている感覚にあたるだろうか。……

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する