今と違い、私が子供の頃はファミリーレストランなどというものがなかったので、家族で外食をするとなれば、もっぱら向かうのは中華料理店であった。
もうあちこちに何度も書いたエピソードではあるが、小学一、二年生のときの誕生日、父に「何が欲しい?」と聞かれ、いつになく優しい父の言葉に動揺した私が「何がいいかな、何がいいかな」とぐずぐず迷っているうちに、「よし、中華料理を食べに行こう」と決まった。がっかりしつつも、なんたって私のためのお祝いである。家族一同、和やかに店で食事を済ませた。そこまではよかったが、会計を済ませ、店の外に出たとたん、私が「寒い!」と呟いたのがいけなかったらしい。時節は十一月の初め。幼い子供が北風に反応したからといって責められる理由はないと思うが、父にはそう聞こえなかったようだ。
「なんだと?」
即座に怖い目で振り返られた。……