これまでの生涯で、味噌汁に感動したことが数回ある。
そもそも普段の食事に「味噌汁がなきゃ困る」と思うほどの味噌汁好きではない。嫌いではないが、なくても不満はない。汁物系であるならば、むしろ洋風のスープを好む。だからこそ、「味噌汁がおいしい!」と思うことは、私にとって珍事なのである。
母は食卓に毎回、味噌汁を並べることはなかったと記憶する。なぜかは知らない。父がそれほど好んでいなかったのかもしれない。
子供の頃の食事習慣はのちのちまで引きずるものらしく、その後、私が親の家を出て一人暮らしを始めたあとも、あまり味噌汁を作ることはなかった。ところが三十代の終わりにアメリカで一年間暮らすうち、ある日突然、……