2022年の世界の動きを振り返ると、常に宗教と政治の深い関わり合いを感じざるを得なかった。ロシアによるウクライナ侵攻は、ウラジーミル・プーチンが「聖戦」として正当化しようとしている。また、米国で行われた中間選挙で国論を二分した中絶問題も、プロテスタントが主流だった米国社会で、カトリック人口が増大した影響が大きい。米人口の60%が中絶の非合法化に反対、これを受けた民主党が若い女性票や無党派層にアピールして、有利と言われた共和党に善戦した。しかし裏を返せば40%近くが中絶に反対しているという現実がこの国にはある。
宗教に関心の薄いといわれる日本人は、これらの事態をどう理解するべきか、2022年に刊行された3冊の本で考えてみたい。
牧原出『田中耕太郎―闘う司法の確立者、世界法の探究者』(中公新書、2022)
田中耕太郎は日本の法学者として、まさに頂点を極めた人であった。東大法学部長を経て、第一次吉田内閣では文部大臣として入閣。参院議員から最高裁長官に転じ、晩年は国際司法裁判所の判事も務めた。だが、彼に対する世間の評価は総じて「アメリカの犬」であり、「保守」「反共産」の権化であり、とくに左派リベラルと言われる人たちからは、つねに厳しい批判を受けていた。田中はこうした声に「世間の雑音に耳を貸さず」と、応じた。そんな田中耕太郎を現在の視点で改めて見つめ直し、従来の評価に一石を投じたのが本書である。
田中の名を世に知らしめた判決の一つは、彼が最高裁長官時代に扱った砂川事件(第2次)であろう。……