カルチャー

現代における中庸の大切さと困難さを考える――フランシス・フクヤマ『リベラリズムへの不満』(新潮社)

2023年4月22日


<span>現代における中庸の大切さと困難さを考える――フランシス・フクヤマ『リベラリズムへの不満』(新潮社)</span>
リベラリズムの根幹を揺るがすような世界の混乱が続く。この状況を打破するには(GoodIdeas / Shutterstock.com)

 フランシス・フクヤマの『歴史の終わり』が、冷戦を終えた世界に大ベストセラーとして迎えられ30年が過ぎた。そこで示された自由民主主義が恒久的な平和と安定を実現する「ポスト冷戦」の世界像は、しかし、いまやロシア・ウクライナ戦争やキャンセル・カルチャーなど混乱の中で完全に否定されたようにも見える。かつてフクヤマが見たのは幻想なのか。それともこの混乱は、やはり歴史が“終わりつつある”過程の光景なのか。フクヤマの最新刊『リベラリズムへの不満』を待鳥聡史氏が読み解く。

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「ポスト冷戦」の後に

 2016年のブレグジット(イギリスのEU脱退)決定、ドナルド・トランプのアメリカ大統領当選、2020年に始まる新型コロナウイルス感染症のパンデミック、米中対立のさらなる深刻化、そして2022年からのロシア・ウクライナ戦争――私たちは近年、明らかに世界の様相が変化し、何らかの意味で新しい時代に入りつつあることを実感しているのではないだろうか。次の時代がどのような特徴を持つのか、それがいつ頃に明確な輪郭を示すようになるのかはまだ分からないが、一つの時代が終わったという印象は拭いがたい。

 終わったと思われる時代は、しばしば「ポスト冷戦」と呼ばれてきた。「ポスト」という表現からも分かるように、それ以前の冷戦期に比べると明瞭な対立軸はなかったかもしれないが、特徴を欠いていたわけではない。自由で開放的な国際秩序が望ましい基本原理とされ、その下での具体的な方向性として、国際的にはグローバル化、国内的には民主化が追求されてきた。根底にあった理念は、自由主義(リベラリズム)であった。……

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