トランプ政権誕生で再びブームとなったディストピア小説、ギリシャ神話から18世紀の「少女小説」まで共通する性加害の構造、英語一強主義を揺るがす最新の翻訳論――カズオ・イシグロから村田沙耶香まで、危機の時代を映し出す世界文学の最前線を、数々の名作を手がける翻訳家・鴻巣友季子が読み解いた『文学は予言する』が話題だ。文学の先見性とデザインとの結節点を、デザイナー渡邉康太郎氏が見出す。
未来を想像するデザイン
わたしはデザイナーとして働いている。
この仕事ではしばしば、数年先の未来の世界で、企業や大学などの組織が迎えている局面を想像する。そして、その組織が目指すべき未来の姿を言語化・視覚化するのだ。たとえば、これまで銀座で一冊だけの本を売る小さな本屋「森岡書店」の立ち上げを手伝ったり、日本経済新聞社やFM局J-WAVEの未来ビジョンの言語化を手伝ったり、ロゴマークをつくったりしてきた。
どのようなプロジェクトでも、大なり小なり「数年先の未来の世界」を想像するプロセスがついてくる。そこで思い返すのが、多くの短編・長編小説で未来の世界を描いてきたアメリカのSF作家、ウィリアム・ギブスンの言葉だ。「未来はすでにここにある。ただ均等に分配されていないだけだ」──。……