カルチャー

連載小説 オペレーションF[フォース] 第20回

2023年7月8日

国家存続を賭けて、予算半減という不可能なミッションに挑んだ「オペレーションZ」。あの挫折から5年、新たな闘いが今、始まる。防衛予算倍増と財政再建――不可避かつ矛盾する2つが両立する道はあるのか? 目前の危機に立ち向かう者たちを描くリアルタイム社会派小説!

【前回まで】赤字国債発行は異常事態、必要なサービスを提供するために税がある――土岐は、学生たちに正義を説いた。女子学生の一人が、防衛費は倍増で足りるのかと疑問を投げる。

 

Episode3 リヴァイアサン

 

3

 講義が終わり、教授室にいるのは、宮城、土岐、そして周防の3人だけになった。

「それで、あと、どれぐらい持つ?」

 缶ビールでひと息入れたあとで、土岐が周防に尋ねたのは、防衛省と主計局防衛係の攻防の決着時期の話だ。

「明日、合意に達しても不思議ではありません」

「松平さんが、そんな簡単に陥落するのか」

「さすがの“仕事人”も、泣く子と地頭[じとう]には勝てません」

 意味が不明だった。

「おい、ミスター財務省、あんたアフリカで悪い病気もらってきたんじゃないの? 言っている意味が、全然分からないんだけど」

 宮城が割り込んできた。

「あっ、すみません。泣く子は世論で、地頭は官邸です。もちろん、官邸が言ってるのは、5年間で倍にせよということですから、まずは1.2から1.3ぐらいになるのだと思いますが」

 それでも1兆円から1兆5000億円を新たに捻出しなけばならない。

「ミスターはのんきだねえ。その程度の増額で、日本列島は守れるわけ?」

「ないよりましでしょ。千里の道も一歩からです」

「周防、ちゃかすな。真剣に言え」

「すみません。米軍支援が薄くなる代わりに、防衛費を増額というのは、ある程度理屈には合っています。しかし、防衛省は調子に乗っているし、要求は無駄ばかり。本当に有効な安全保障策とは言えないと思います」

「今朝の暁光新聞の記事でコメントしていた財務省関係者って、もしかしておまえだったのか」

 周防の目が泳いだのを見て、土岐は確信した。

「そんな些末な話はどうでもいいからさ、ぶっちゃけ、日本を守るためにはいくら要るんだ、ミスター財務省」……

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