電子戦、ドローン、AI、民生技術を使った戦いが戦況を左右する現在のロシア・ウクライナ戦争は、しばしば「新しい戦争」と表現されます。2022年2月24日のロシアによる侵略開始の後、対戦車ミサイルや携帯式防空ミサイルによる防御戦を中心に続けたウクライナは、23年に大規模反攻を行いました。しかし大きな戦果には結びつかず、ウクライナは従来型の突破戦の限界に直面します。
ここでウクライナ軍は、ドローンなど無人兵器の活用と、前線からのフィードバックによる兵器システムの高速改修に軸足を移し、2024年には「無人システム部隊」を発足させます。つまり、軍の構造そのものも変化させながら、戦術・装備・部隊運用を戦場に適応させて行きました。今年春から目立つようになったウクライナによる反撃とロシアの停滞の背景には、こうした「新しい戦争」での優位があるとされています。
一方のロシアはどうなのか。この戦争でロシア軍は弱体化していると言えるのか。あるいは、ロシアが再び戦争の性格を大きく変えることはありうるのか。今回はそうしたことを念頭に、記事・論考をピックアップしました。
米フォーリン・ポリシー誌掲載の論考は、ロシアの新兵が「訓練入りしてから戦場で死亡するまでの平均生存期間は10日~3週間」「戦場に送られてからの平均生存時間は20~35分」と伝えています(詳細、後出)。実際、苦境が深まっていると見るべきでしょう。しかし、国内政治的にも追い詰められたプーチン体制が、手段を選ばない状況打開を狙う可能性が指摘されます。また、実戦経験によりロシア軍の能力が向上し、将来のNATO(北大西洋条約機構)にとって大きな脅威になるとの見方もあります。「将軍たちは常に最後の戦争に備える」という言葉がありますが、この戦争の中でロシア軍もまた、大規模侵攻開始時の姿ではないようです。楽観を戒める議論が目立ちます。
キア・スターマーが退陣するイギリス政治の袋小路に出口はあるのか、そもそも欧州に再生への道筋は見えているのか(イタリアのプランニングとドイツのリーダーシップを結びつけよ、との主張は興味深いものでした)といった論点にも注目しました。ほかに「なぜワールドカップは中国と縁薄いのか」「アメリカは老人支配社会になりつつあるのか?」「日本のアニメーターたちの不可解な消失」など、気になる記事も紹介します。
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As the Tide Turns Against Putin, Beware the Drowning Man【Peter Frankopan/Foreign Policy/6月25日付】
「プーチンにはもはや安易な逃げ道はない。国内の不満の高まりが示すように、この戦争は財政面、人口動態面、そして政治面において、もはや維持不可能なものとなっている」
「同時に、経済が戦争機械を構築・維持する体制へと変貌したことは、ウクライナとの和解に合意することは言うまでもなく、防衛費の削減さえも新たな問題を引き起こすことを意味する。軍事費が経済成長を支えるほぼ唯一の原動力となっているため、その支出を削減すれば、経済は急激に縮小するだけでなく、国家調達で富を築いているプーチンの側近たちにも打撃を与えることになるからだ」
直近ではウクライナ東部ドネツク州での前進が伝えられるロシアだが、マクロの視座から眺めると「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にとって今は難しい[tricky]時期だ」。そう指摘するのは、英オクスフォード大教授のピーター・フランコパン。フォーリン・ポリシー誌サイトに寄せた「プーチンへの風向きが変わる今、この溺れる男に着目せよ」(6月25日付)で、彼はまず、ウクライナ戦争関連でのロシアの苦境を具体的に伝える(軍事関連の数値は西側の当局やメディア、研究者などによるもの)。