経済・ビジネス

【骨太ショック】高市政権はなぜ金融市場の信用を失ったのか 長期金利が安定するイタリアとの違いを学ぶ

2026年7月17日


<span>【骨太ショック】高市政権はなぜ金融市場の信用を失ったのか 長期金利が安定するイタリアとの違いを学ぶ</span>

骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)の原案が示されたのを機に長期金利が上昇し、“骨太ショック”として市場の注目を集めている。政府は「金融市場の誤解」としてその火消しに努めるが、「信用」という実績の積み重ねを軽視したままでは、金融市場からの肯定的な評価は得られない。同じく保守派のリーダーとして比較されながら長期金利の安定をもたらしたイタリアのメローニ政権とは、何が違うのか。

骨太ショックは「金融市場の誤解」なのか

 高市政権が6月末に「骨太の方針」の原案を公表して以降、長期金利の上昇に弾みがついている。指標となる10年国債流通利回りは2.6%台から2.8%台後半まで急上昇し、報道などでは「骨太ショック」という言葉が聞かれるようになった。世界の金利の中心である米国の10年国債流通利回りとの間のスプレッド(利回りの差)も急激に縮小した(図表1)。

図表1    日米の10年債流通利回りの推移

(出所)日本銀行、米連邦準備制度理事会

 長期金利の上昇に弾みがついた理由は、骨太の方針で高市政権の拡張財政志向が再確認されたことにある。金融市場はそもそも高市政権の拡張財政志向を警戒しており、それに国債売りや円売りという回答を与えてきた。しかし、高市政権は相も変わらず骨太の方針で拡張財政志向を鮮明にした。それゆえに金融市場も厳しい回答を示した。

 首相周辺には、金融市場は骨太の方針を正しく理解していないという声があるようだ。要するに、高市政権と金融市場との間では認識のズレがあり、それは金融市場の誤解に基づくものだとの見解らしい。とはいえ、これは無責任な姿勢と言わざるを得ない。では、なぜ誤解を招かないように、慎重なコミュニケーションに努めなかったのか。

 そもそも石破前政権まで、政府は基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を目指すことを内外に公言していた。その姿勢を見せると同時に、可能な限りの努力を行うことで、金融市場の信頼をつなぎ止めていたわけだ。それが高市政権の発足以降、政府は基礎的財政収支の黒字化の目標を取り下げ、金融市場の信頼を裏切ったわけだ。

 それ以来、日本の長期金利は他の主要国以上のテンポで上昇している。野放図な財政拡張を志向しているわけではないと政府は繰り返し説明しているが、金融市場の信頼を失ったツケは大きい。信頼を取り戻すためのメッセージを発するべきなのに、高市政権は骨太の方針で真逆のメッセージを送ったことになる。金利上昇は当然の帰結だ。

「信用」で成り立つ金融市場

 高市政権の拡張財政志向は、高市早苗首相その人の発言というよりも、周辺の発言によって作り上げられている側面が大きい。政権の一部の閣僚や経済アドバイザーらは異口同音に、拡張財政の必要性や正当性を主張する。これまでの財政がいかに緊縮的だったかを強調し、拡張財政こそが必要だとする。同時に、日銀による利上げは不当と強調する。

 骨太の方針の原案にも日銀の利上げを牽制するような文言が盛り込まれていた。具体的には「適切な金融政策運営」が「非常に重要」だという表現だが、文脈はさておき、これまでの高市政権を取り巻く環境に鑑みれば、こうした表現が日銀の利上げを牽制するものだと金融市場が捉えても致し方がない。これが“誤解”なのだろうか。

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