連載|Foresight

Vol. 269

マルコ・ルビオのアテネ演説は「今年最高」に値するか?

2026年10月18日


<span>マルコ・ルビオのアテネ演説は「今年最高」に値するか?</span>
ルビオ米国務長官は西側諸国に対して自らの卓越性を再発見するよう呼びかけた[2026年10月7日、ギリシャ・アテネ](C)Mark Schiefelbein/Pool via REUTERS

 前回の当欄で取り上げた米露の「ディーゼル・ディール」に続き、ドナルド・トランプ米大統領は16日、「対ロシア制裁法」の実施見送りを決めました。ロシア産エネルギーの主要購入国に対する追加関税や金融制裁を通じてロシアの戦費調達を締め付ける狙いは、ひとまず棚上げされた形です。

 米国の対露融和姿勢がさらに鮮明化する足元、気になる報道が米「ワシントン・ポスト」紙に出ています。詳細は後出の記事紹介に譲りますが、米国がウクライナ、欧州、ロシアとの間で進める和平案交渉の新たな動きを伝える内容です。その柱の一つとして、エネルギー協定を通じたロシア・ウクライナ・欧州の経済統合構想が浮上していると、同紙コラムニストのデビッド・イグナティウスは米当局者への取材を元に記しています。

 和平案にエネルギー協力や制裁解除が対露の誘因として組み入れられるのは、恐らく初めてではありません。米政府などから全容の発表はないものの、これまでもロシア産パイプラインガスの欧州向け供給を再開する案などが、主要メディアから伝えられてきました。ただ、今回の報道が伝えるのは、ウクライナにも利益を分配する構想であることが注目されます。ウクライナを経済協力の受益者として組み込み、領土問題での妥協を促しています。同時にこの構図には、ロシアに長期的な市場アクセスを提供し、和平を維持する動機を与える狙いもあるでしょう。

 トランプ大統領は今回の制裁見送りについて、「私の決定が何か、皆さんはまだ知らない」と述べていますが、制裁見送りがウクライナ和平案と連動する可能性も頭に入れておきたいところです。

 もっとも、上記のワシントン・ポスト報道に対応する欧州側の動きはよく見えません。ロシアの凍結資産の扱いなどをめぐって、米国と欧州はこれまでと変わらず立場を違えています。米欧の溝が埋まらぬ限り、ウクライナ和平案にも急展開は想定しにくいように思います。

 その米欧の溝に関しては、マルコ・ルビオ米国務長官がギリシャで行った、欧州の覚醒による西側の再生を訴えた演説が賛否両論を呼んでいます。米「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙は「今年最高の演説」と絶賛。しかし米「ワシントン・ポスト」紙は、ルビオ氏が西洋文明を特徴づける資質として「強さ」や「勇気」を強調したことについて、「チンギス・ハンも余すところなく備えていた」と冷たい反応。西洋文明を際立たせているのは、そうじゃない、「思想」なのだと論じます(詳細、後出)。

 今週はこのほか、インドネシア市場の株価暴落、そしてますますリアルに意識されるAI(人工知能)バブルの崩壊リスクなど、9本の記事・論考を選びました。

 皆様もぜひご一緒に。

[Opinion]‘Make the problem and the solution bigger’: The plan to end the Ukraine war【David Ignatius/Washington Post/10月12日付】

 ロシアからのディーゼル燃料輸入をめぐるディール、ウクライナに向けた情報支援停止の威嚇など、トランプ政権の対露ウ戦争政策がまた不確実性を増している。だが、「これまでのトランプによる数々の突発的な発言と同様、今回のウクライナをめぐる騒動も、より重要な動きを覆い隠しているのかもしれない」との見方が出てきた。

 その動きとは、「領土問題の解決に向けた基礎として、ウクライナとロシアの両方に財政的・安全保障上の利益をもたらす共同和平案に向けて、米国と欧州がゆっくりと歩みを進めている」ことだ。

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