連載|Foresight

Vol. 270

「外交」を見失ったイスラエルの総選挙、「アメリカ・ファースト2.0」のすすめ

2026年10月25日


<span>「外交」を見失ったイスラエルの総選挙、「アメリカ・ファースト2.0」のすすめ</span>
アラブ系政党の伸長はイスラエル政治に何をもたらすか[支持者と交流する中道野党ヤシャルのアイゼンコット党首=2026年7月6日、イスラエル・ディモナ](C)REUTERS/Amir Cohen

 10月27日に実施されるイスラエル総選挙は、極めて接戦になると考えられます。ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる与党リクードとガディ・アイゼンコット元参謀総長率いる中道野党ヤシャルの獲得予想議席数が拮抗しているだけでなく、両党を中心とする陣営も、それぞれ国会の過半数に届かないと見られます。選挙後は陣営の枠を超えた連立交渉が必要となり、政権樹立の難航は避けられない情勢です。連立交渉が頓挫した場合は再選挙へと進み、ネタニヤフ氏はそれまで暫定首相に留まります。

「中道野党ヤシャルの党首ガディ・アイゼンコット氏(66)が27日の総選挙で持つ強みの一つは、単純かつ否定しようのない事実にある。それはネタニヤフ首相ではないということだ」と米CNNが表現するように、選挙戦の焦点は、2023年10月7日のハマスの攻撃を阻止できなかった責任は誰にあるのかに絞られています。掲げる政策方針に鑑みれば、アイゼンコット氏が政権を樹立した場合でも、イスラエルの外交やパレスチナ問題への対応が大きく変わることはないというのが主要メディアの大方の見方。しかし、一方で注目を集めているのが、アラブ系有権者の投票です。イスラエルの人口の約2割を占めるアラブ系市民の投票率が上がれば、アラブ系政党が議席を増やし、選挙後の連立交渉でアイゼンコット氏への支持や閣外協力を通じて政権の行方を左右しうるからです。

 アイゼンコット氏もネタニヤフ氏同様、ガザからハマスを排除することを掲げていますが、その姿勢は必ずしもネタニヤフ首相ほどタカ派的ではなく、排除には外交手段を検討する意思を示唆しています。今回の選挙を国際政治の文脈でとらえた場合、「軍事力への依存を強めてきたイスラエルが外交的な選択肢を取り戻せるか」が焦点と言えそうですが、そこにはアラブ系有権者の判断が重要なファクターになりそうです。

 今回は、この「アラブ票」問題などイスラエル総選挙をとらえるいくつかの観点、中間選挙後の米国の外交戦略の“ありうべき変化”を考える議論(米ジョージタウン大教授のチャールズ・カプチャン氏が「アメリカ・ファースト2.0」とでも呼びたくなるトランプ外交のバージョンアップ案を提示しています)、“賭け”に次々と失敗しているサウジアラビア外交の苦境など、8本の記事・論考を選びました。

 皆様もぜひご一緒に。

A deeply divided Israel prepares to vote【Economist/10月22日付】

「10月7日の虐殺から3年が経過し、ネタニヤフ首相の対立候補たちは、今回の選挙[10月27日の総選挙]を、あの日およびその後の戦争や流血の清算の場とすることを決意している。『完全な勝利を約束する者は誰であれ、国民を欺いている』と、アイゼンコット氏は[略]ネタニヤフ氏の戦時スローガン[ハマスに対する「完全な勝利」]に触れて語った」

「イスラエル各地を巡ると、この国が深く分断されていることがよくわかる。どの政党も得票率20%を超える見込みはない。政治的な同盟関係は流動的だ。ネタニヤフ氏とその同盟者には政権維持への明確な道筋が見えないが、内輪揉めを繰り返す敵対勢力も連立政権を樹立できない可能性がある」

 英「エコノミスト」誌は「深く分断されたイスラエルが迎える総選挙」(カフル・カシム/スデロット発10月22日付)で、イスラエルの総選挙とその後について、このように伝えている。

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