※本稿は「週刊新潮」2012年2月16日号に掲載された特集を元に再構成したものです。また、年齢や肩書は事故当時のものです。
消防官人生で忘れることのできない「2つの事件」
33人の犠牲者を出したホテルニュージャパンの大火災があった翌朝。余燼(よじん)燻る東京・永田町の焼け跡をじっと見つめる男がいた。東京消防庁蒲田消防署の猪狩武警防課長(45)である。
猪狩課長は忸怩たる思いで黒く焦げたホテルを見あげた。というのも、3年前に蒲田署に異動になる前まで、本庁予防課の査察官として、何度もホテルニュージャパンの査察を行っていたからである。
「天井の裏まで入って調べた。スプリンクラーがきちんとついていないとか、防火設備の不備を指摘しました。横井英樹社長に何度か会いましたが、遵法精神の欠片もない。消防の注意なども見下していて、我々の話を右から左に聞き流すだけ。消防のプロである私たちがキチンと改善させていれば、あんな煙草の不始末であそこまでの火事にはならなかったはずでした」……