戦闘終結に向けた暫定合意の覚書に米国とイランが署名し、イラン戦争は新たな局面に入りました。両国は21日にスイスで実務者協議を開催するとしています。
ただ、イランは20日、イスラエルによる停戦違反があったとして、ホルムズ海峡の封鎖を宣言しました。ドナルド・トランプ米大統領とJ・D・バンス副大統領がレバノンへの攻撃を続けるイスラエルへの苛立ちを露わにし、イランの弾道ミサイル保有を容認したり、イランの自衛権を認める趣旨の発言をしたりと、米国の姿勢はかなり変化してきているように見えますが、60日以内に目指される最終合意の行方は不透明です。
そもそもトランプ大統領は「自分で作った問題を解決しただけ」だというのは米CNNによる皮肉。覚書の14項目の文言からは、実際、開戦以降のトランプ大統領が口にしてきた(そして頻繁に変化してきた)、体制転換などの戦争目的が消えています。同氏は結局、イラン問題はカネで片を付けられるとの判断に賭けたのだと英「エコノミスト」誌は指摘します。
共和党内からは、イランに甘い姿勢をとったとの批判も出ていると伝えられます。これに対しトランプ氏は、「私は大統領で、おまえたちは違う」と反論していると米「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」紙が報じています。政権がますます属人化する中で、次期大統領候補として有力視されるバンス副大統領は新たな自伝『コミュニオン(聖餐、聖体拝領)』を刊行しました。福音派(ペンテコステ派)の家庭に育ち、無神論を経てからカトリックに改宗した信仰遍歴がその主題ですが、行間に政治的野心を見る米「ニューヨーカー」誌の評価は辛口です。
今回はこうしたイラン戦争と米国をめぐる議論のほか、キア・スターマー首相の進退問題がいよいよ大詰めの感がある英国政治の半世紀の失敗、亀裂が構造化しつつある米印関係、ミャンマーなど西側の関与が失われた国々の「選挙」に関与する中国、そして金利収入の追い風が吹く日本の銀行業界で中小金融機関が抱え込んだリスクに関する記事・論考8本を取り上げました。
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Donald Trump gambles that Iran wants money more than power【Economist/6月18日付】
「爆弾でイランを打ち負かすことに失敗したドナルド・トランプ大統領は、賄賂で何とか事態を立て直せるのだろうか? 戦争を終わらせる方法について数週間にわたる駆け引きの末、トランプ大統領とイランの指導者は簡潔な和平覚書に署名した」
「その内容は、イランが核兵器開発の計画を完全に放棄したことをトランプ大統領に納得させることができれば、イランに莫大な資金を提供するという約束に他ならない。これは途方もなく、成功の見込みも薄い賭けであり、中東諸国には厳しい判断を迫ることになる」
米国とイランの間で合意がなされた和平の覚え書きについて、エコノミスト誌はこのような見方を打ち出した。「イランが求めているのは力よりカネとの見方に賭けるドナルド・トランプ」(6月18日付)は、「この覚書は、トランプ氏の戦争目的の多くをなきものとしている。体制転換もなければ、イランの抑圧された人々への支援もなく、イランの弾道ミサイルや代理勢力への支援に対する制限もない」とし、4つの問題点を挙げる。