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「失敗は成功の前提」と衛星打ち上げ失敗を内外に認めた金正恩(2024年5月26日~6月1日)

2024年6月3日


<span>「失敗は成功の前提」と衛星打ち上げ失敗を内外に認めた金正恩(2024年5月26日~6月1日)</span>
打ち上げの翌日、金正恩国務委員長は演説で「第1段エンジンの不正常に伴う自爆システムによって失敗した」と認めた[偵察衛星の打ち上げに言及した創立60周年を迎えた国防科学院での演説=2024年5月28日](『労働新聞』HPより)

過去には偵察衛星の打ち上げ失敗を自国民には知らせないこともあった北朝鮮だが、今回は金正恩国務委員長が自ら、国防科学院での演説において早々に失敗を認めた。一方、「汚物」をくくり付けた風船を韓国に飛ばしたことに関する金与正党副部長の談話は、なぜか『労働新聞』には掲載されていない。『労働新聞』注目記事を毎週解読。

 

 5月27日深夜、北朝鮮は半年ぶりに偵察衛星の打ち上げを試みたが、国家航空宇宙技術総局は朝鮮中央通信を通じて、「新型衛星キャリア・ロケット1段目の飛行中、空中爆発した」「新しく開発した液体酸素+石油エンジンの作動信頼性に事故原因がある」と早々に失敗を認めた。

 これはあくまでも対外向けの発表であり、自国民に対しては当面の間、打ち上げ失敗の事実を伏せるものだと考えられた。昨年5月に初めて偵察衛星を打ち上げて失敗した際には2週間以上経ってからその事実を自国民に公表し、昨年8月の再打ち上げ失敗については『労働新聞』や朝鮮中央テレビが一切その事実に触れないままだからである。また、周辺国に対しては今回も打ち上げ期間(5月27日~6月4日)の事前通告があったものの、北朝鮮国内では予告がなかった。

 しかし、今回は翌日の28日に金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長自ら打ち上げ失敗に言及した。創立60周年を迎えた国防科学院での演説において、「今回の打ち上げは、第1段エンジンの不正常に伴う自爆システムによって失敗した」と認めたのである。そのうえで、「今回も衛星打ち上げの透明性を保障し、該当域内で一切の船舶及び航空機の安全のために国際法規を尊重して順守した事前警報を発令し、周辺国の安全に影響がないようにした」と主張し、にもかかわらず「韓国傀儡」は「挑発だとの詭弁を並べ立て…ヒステリックな狂気を振りまき、武力示威をもってわれわれに正面から挑戦する行為を強行した」と非難した。

 金正恩政権が衛星打ち上げに際して周辺国に対する事前通報を一貫して行っている理由が、国際ルールを順守していることを内外に示すためで あることが分かる。北朝鮮と特段の敵対関係にない第三国に対しては一定程度の説得力を持つとの思惑であろう。……

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