5月8日付の1面は、北朝鮮の三代指導者に仕えてプロパガンダを担った金己男(キム・ギナム)氏(94)の死去に関する報道であった。1面トップには遺影とともに「訃告」(朝鮮労働党中央委員会、国務委員会、最高人民会議常任委員会、内閣の4機関連名)と略歴が、その右横には金正恩(キム・ジョンウン)を委員長とする国家葬儀委員会の名簿が掲載された。また、第2面上段は、金正恩が金己男の霊柩を訪ねたとの報であった。
『労働新聞』掲載の略歴によると、1929年生まれの金己男は、1970年から朝鮮労働党機関誌『勤労者』や機関紙『労働新聞』の副主筆、責任主筆を経て1985年に党中央委員会宣伝部長(のちに宣伝扇動部長)となり、2016年からは金正恩政権下で国務委員会委員にも就任していた。2011年12月に死去した金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の葬儀の際、霊柩車に寄り添った8人のうちの1人でもあり、金永南(キム・ヨンナム)前最高人民会議常任委員長の弟としても知られる。
このような重鎮幹部の訃告は金正恩時代に入って急増した。「国家葬儀委員会」の組織は、金正日(2011年12月)、金国泰(キム・グクテ、2013年12月、葬儀委員長は金永南、全秉浩(チョン・ビョンホ、2014年7月、委員長は金正恩)、李乙雪(リ・ウルソル、2015年11月、委員長は金正恩)、金養建(キム・ヤンゴン、2015年12月、委員長は金正恩)、姜錫柱(カン・ソクチュ、2016年5月、委員長は崔龍海=チェ・リョンヘ)、金英春(キム・ヨンチュン、2018年8月、委員長は金正恩)、金鉄万(キム・チョルマン、2018年12月、委員長は金正恩)、黄順姫(ファン・スニ、2020年1月、委員長は崔龍海)、玄哲海(ヒョン・チョレ、2022年5月、委員長は金正恩)、そして今回の金己男で11回目である。金正恩が葬儀委員長を務めたのは今回を含めて7回目であると考えられる。なお、軍人である玄哲海の「訃告」は内閣の代わりに党中央軍事委員会を含めた4機関によって出されていた。
今回の国家葬儀委員会は、委員長である金正恩を別格として、金徳訓(キム・ドックン)内閣総理、趙甬元(チョ・ヨンウォン)党書記、崔龍海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長、李炳哲(リ・ビョンチョル)党書記、李日煥(リ・イルファン)党書記・党勤労団体部長、朴正天(パク・ジョンチョン)党軍政指導部長、金在龍(キム・ジェリョン)党幹部部長、趙春龍(チョ・チュンリュン)党書記・党軍需工業部長、全賢哲(ジョン・ヒョンチョル)党書記・党経済部長の順で紹介された。党政治局の常務委員に続いて委員、その後に中央委員の順番で紹介されており、少なくとも上位層において特段の異変は見られない。……