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202.0

逆回転するアメリカのリーダーシップとジョセフ・ナイの死去

2025年5月11日

 モスクワで開かれる中ロ両国の首脳会談を控えた5月7日、カーネギー・ロシア・ユーラシア・センターのアレクサンダー・ガブエフ所長は英「フィナンシャル・タイムズ」紙に「習近平とプーチンはトランプが生んだカオスの最大の受益者(Xi and Putin are the greatest beneficiaries of Trump’s chaos)」と題するオピニオンを寄稿しています。ドナルド・トランプ大統領が世界的な関税戦争を仕掛け、米国主導の国際秩序を自ら熱心に破壊しているいま、中国とロシアはその恩恵を受ける立場にあるし、好機を傍観する気もないだろうとの見解です。

 8日に発表された中ロの共同声明(ロシア政府の公式サイトにはアクセスできず、中国政府側へのリンクを張ります)の詳細については専門家の分析を待ちますが、AI翻訳で読む限り、軍事・軍事技術協力を強調するなど、昨年5月の共同声明よりもさらに踏み込んでいる印象があります。ガブエフ氏の懸念は実際、具体化しつつあると言えそうです。

 ロシアとの関係を強化する一方で、中国は「一帯一路」の復活、特に南米との協力に改めて力を入れています。ブラジルとチリは対中貿易に貢献する南米大陸横断ルートの開発を加速することを打ち出しました。コロンビアも新たに一帯一路への参加を表明しました。その背景に、アメリカがトランプ関税によって中ロをグローバル・サウス諸国に売り込む「無意識のセールスマン」(ガブエフ氏)になってしまっているという構図があるのは明らかです。

 こうした秩序混乱の只中、国際政治学者のジョセフ・ナイ氏(米ハーバード大学特別功労名誉教授)が5月6日に逝去しました。88歳。軍事や経済などによる強制ではなく、価値観や文化の力で味方を得る「ソフトパワー」外交を1990年代から提唱しました。4月に亡くなったリチャード・アーミテージ氏とともに、知日派として日米同盟の深化にも尽力しました。……

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