連載 > 政治

161.0

米国大統領は法を超越した「王」なのか

2024年7月20日

 今週もお疲れ様でした。暗殺未遂事件の余波が続く中、トランプ前米大統領が18日に行った共和党大統領候補の指名受諾演説は「団結」を強調するものでした。それはアメリカ社会の分断を繋ぐ「団結」なのか、あるいは岩盤支持層の熱狂的「団結」であって逆に分断を加速するのか。結局はトランプ氏の気まぐれ次第という見方も多く、ひとまず「要観察」スタンスの報道や論考が目立ちます。

 むしろ、月初(1日)の出来事ながら活発な議論が続いているのが、トランプ氏に刑事責任の一部免責を認めた米連邦最高裁の判断です。2020年大統領選の結果を覆そうとしたとされる事件をめぐって「大統領在任中の公務としての行動は免責される」とした問題ですが、はたしてこれは大統領の独裁に道を開くのか。連邦最高裁は近年、人工妊娠中絶の権利を保障した1973年のロー対ウェイド判決を覆し(22年6月)、過去40年にわたって司法と行政の関係を規定してきた「シェブロン法理(Chevron doctrine)」を無効にする(24年6月)など、その保守的な決定が大きな波紋を広げています。バイデン大統領の陣営は今回の判断を強く非難し、連邦最高裁の改革を検討しているとも伝えられます。

 フォーサイト編集部が週末に熟読したい海外メディア記事7+α本、皆様もよろしければご一緒に。

The Imperial Presidency Unleashed【Sarah Binder, James Goldgeier, and Elizabeth N. Saunders/Foreign Affairs/7月18日付】】

「今週、ミルウォーキーで共和党員が集まり、ドナルド・トランプ氏の大統領候補指名を行う。これは過去2回行われた指名と同じものだ。しかし今回は、状況が大きく異なる。最も明白なことは、選挙集会中にトランプ氏が暗殺されかけてからわずか5日後に指名が行われるということだ」
「もうひとつ、2つの驚くべき法的展開を受けて行われる指名という側面もある。2つのうちより新しいのは、フロリダ州での機密文書事件が却下されたこと。もうひとつは、トランプ対合衆国の紛争についての最高裁判決だ。この判決により、大統領は退任後に刑事訴追から免責されるという広範な特権が与えられる」

 米「フォーリン・アフェアーズ(FA)」誌サイトが、米国の外交を憂いて警戒や猛省を促す論考を立て続けに掲載している。同誌は6月に雑誌版の最新7・8号を発売したが、そこで特集に組み込んだ記事を後からオンライン公開しているわけではない。雑誌版とは別にサイトで個別に掲載されていく論考のなかに、共通する危機感をもとに書かれたものが増えているのだ。

 冒頭で紹介した「タガの外れる帝国大統領制」(7月18日付)も、その1本。トランプ前大統領の在任中の業務が刑事面で「絶対的な免責」の対象となるという判断を最高裁判所が示したことを受けての小論だ。筆者は米ジョージ・ワシントン大教授のサラー・バインダー、同ブルッキングス研究書非常勤研究員のジェイムズ・ゴールドガイヤー、同コロンビア大教授のエリザベス・N・サンダース。……

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、私たちが「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する