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グローバル・ジハードの「触発」と「指示」の相違

2016年6月15日

6月12日のフロリダ州オーランドのナイトクラブへの銃撃テロについて、翌朝のブリーフィングでオバマが「触発された(inspired)」と「指示された(directed)」を使い分け、inspireされたものだという現時点での見通しを示していたことを前項で示した。この使い分けは、国際テロリズム研究者ダニエル・バイマンが12日夜の段階でウェブ雑誌に寄稿した論考でも明確になっている。これは現在のグローバル・ジハードを見る際に基本的な概念なので、知っておくといいだろう。

Daniel Byman, "Omar Mateen, Lone-Wolf Terrorist," Slate,  June 12, 2016.

ここでバイマンは「イスラーム国」に「触発」されたものか「指示」されたものかは大きな違いで、二つのものを混同してはいけない、と論じている。今回の事件は「イスラーム国」に触発された個人が独自に行ったローン・ウルフ(一匹狼型)のテロと見られると記している。触発されたローン・ウルフ型のテロは一般に素人的で規模が小さいが、今回は殺傷性の高い武器を入手できたことから大規模な事件となった。しかしこれが「イスラーム国」から指示されて、シリアで戦闘経験を持つ人物が加わって行った昨年11月13日のパリの事件のようなものであればさらに規模は大きくなっただろうと論じている。ローン・ウルフ型の、直接的なつながりや指示がないテロは予測が困難、という指摘はその通りだろう。

翌13日にパリで起こった警察幹部とその妻の殺害事件との関係はわからない。直接的な関係はなさそうだが、別個に「イスラーム国」などから扇動されていた可能性は全くないわけではない。現状ではオーランドの事件は単独で触発されたのではないかとみられるのに対して、パリの事件は、犯人のラロースィ・アッバーラ(Larossi Abballa)には、パキスタンへのジハード戦士勧誘で有罪となった過去があるなど、なんらかの組織との接点がないわけではないだろう。それでも、イラクやシリアの「イスラーム国」から直接に指示されたというよりは、扇動に応えて自発的に行動に移した可能性がある。……

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