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入国制限対象の当初「7カ国」の選定はトランプの独断ではない

2017年3月9日

1月27日の入国制限の大統領令では7カ国(イラン、イラク、リビア、ソマリア、シリア、スーダン、イエメン)、3月6日の大統領令ではそこからイラクを除いた6カ国が、テロリストの米国への侵入を防ぐという目的で、国籍保有者の入国を厳しく制限されることになったが、これは適切なのだろうか。この問題には論点が複数ある。特に、「これらの6カ国(当初は7カ国)を選別する」ことの適切さと、それらの国籍保有者の「入国を制限する」ことの適切さを、分けて検討する必要がある。

これらの国々を「テロ支援国家」として問題視することは、トランプの独断やきまぐれによるものとは言い切れない。それらの国と関係する人々の米国への入国を制限、あるいは審査を特に厳しくすることがテロ防止に役立つという考えも、是非はともかく、トランプ独自のものではない。しばしば忘れられがちなことだが、2015年12月8日に米連邦議会が可決したビザ免除厳格化法(H.R.158 - Visa Waiver Program Improvement and Terrorist Travel Prevention Act of 2015)とその施行過程で、これら7カ国をテロ対策の観点から人的交流を厳しく監視する対象として特定していた。この法で対象となったのは、それらの国の国籍保有者ではなく、それらの国に渡航歴がある外国人が米国に入国する際の、ビザ免除からの除外である。7カ国の国籍保有者については、そもそもビザ免除の対象にはなっていないため、直接的には影響はなかった。

本「中東通信」欄でもこの法については取り上げた(池内恵「米議会のテロ対策としてのビザ免除プログラム厳格化法案はなぜかイランを含む」2015年12月19日)が、可決された法ではイラン、イラクとシリア、スーダンの4カ国を特定し、ビザ免除対象国の国民であってもこれら4カ国への渡航歴がある場合はビザ免除を除外されビザ取得を求められることになった【2016年1月21日の国土安全保障省の施行細則の発表】。さらに同年2月18日にはリビア、ソマリア、イエメンへの渡航者も追加され、計7カ国となっている【2016年2月18日の国土安全保障省の発表】。この7カ国の指定を、1月27日のトランプの大統領令も踏襲している。

オバマ政権と民主党はこの法案に反対していたが、議会で多数派を占める共和党が予算と抱き合わせでこの法案を通したため、オバマ大統領は署名拒否による差し戻し・廃案という手段を封じられ、成立してしまった。この法に対しては批判も多く、民主党と共和党の立場の差は大きいものの、少なくとも議会多数派の共和党がこの7カ国をテロ支援国家として特定し人的交流を制限する法を通し、施行されてきたことは事実である。……

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