4月4日早朝に行われたとみられる化学兵器の使用に対して、4月6日にトランプ大統領は電撃的な政策転換でアサド政権への空爆に踏み切ったが、基点は2013年8月31日にある。先立つ8月21日にダマスカス近郊で行われたとみられるアサド政権による化学兵器の使用に対して、オバマ大統領が一度は「レッドラインを超えた」と認定しながら、一転して議会の承認を求める、と表明した日である。これによって国際秩序を支える規範に実効性を与える強制力を担保する主体としての米国の地位は大きく損なわれた。特に中東では、反米国は増長し、米同盟国も不安に駆られてロシアに接近するなど、大きな変化をもたらした。
この発端については「『オバマ・ショック』が世界に迫る選択──シリア問題への熟考(1)」をフォーサイトに寄稿し、その後に集中して論考を載せておいたが、その後の展開は、この時点での理論的な想定と、それに基づく危惧の念を、裏付けるものだった。
トランプ大統領がなぜここで、米国の地位低下の打開に踏み切ったか、原因については諸説あり、ここでは確定できない。それが何であれ、今後「二の矢・三の矢」を繰り出すか否かで、その意思と能力が図られることになるだろう。
アサド政権とロシアは、「化学兵器以外」の大量殺傷兵器を多く繰り出して空爆を強めており、米国がこれに反応をしないのであれば、「化学兵器さえあからさまに使ってくれなければいい」と言わんばかりだったオバマ政権と実態はさほど変わらないことがすぐに露呈する。劇的な政策転換の効果は、その後の追加措置がなければ急速に逓減していく。それに対する批判をどう受け止めるのかがトランプ政権にとって難題となる。かといって追加の攻撃を行えば今度は「泥沼化」の批判を受けるだろう。……