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トルコ・イスラエルの舌戦とアラブの傍観・危惧

2020年1月29日

連載「中東 危機の震源を読む」に久しぶりに論考(中東―危機の震源を読む (96)
年末年始・中東のもう1つの騒動:東地中海ガス田をめぐるトルコとイスラエルの虚実皮膜」
)を寄稿した。今後は大きなテーマについてのまとまりのある論考は連載「中東 危機の震源を読む」に、日々の観察メモは「中東の部屋」に、そしてちょっとしたヒントになる情報、中東情勢の見方や枠組みをめぐるバックグラウンドの情報などを、この「中東通信」に「つぶやいて」いくことにする。

さて、本日寄稿した論考の補足として、いくつか記事を紹介したい。東地中海のガス田開発の主導権をめぐって、あるいはそれ以外の様々で、鍔迫り合いを繰り広げるトルコとイスラエルだが、メディア上でのさや当てが続く。

1月2日のイスラエル主導でギリシア・キプロスと合意したEastMedパイプライン構想について、トルコの国営放送TRTの国際放送英語版TRT Worldのウェブサイトは、"Israel’s Mediterranean pipe dream(イスラエルの地中海の夢物語)" と題した辛辣な論評を載せ、パイプライン構想を実現不可能と断じている。トルコの国営『アナドル通信』は11月27日調印のトルコ・リビアの海上国境をめぐる覚書で、両国で地中海を横断する排他的経済水域を主張したことをgame changerと寿ぐなど("Turkish-Libyan maritime pact a game changer in E.Med," Anadolu Agency, December 12, 2019) 、概してトルコの国営メディアはこの問題について翼賛的であり、中立的な分析とは言い難いが、雰囲気はよく伝わる文章である。

アラブ世界からの反応も興味深い。『アラブ・ニュース』紙は"Geopolitical tensions may make EastMed pipeline unfeasible," Arab News, January 20, 2020. という外部執筆者のコラムを載せて、トルコとイスラエルが主にアラブ世界で展開する角逐について付かず離れずの位置から危惧の念を表明している。東地中海のガス田はイスラエルとトルコやキプロスだけでなく、エジプト、パレスチナ(ガザ)、レバノンの沖合に広がっている。イスラエルはエジプトとヨルダンへのガス供給により影響力を強めようとしている。さらに今回、トルコはリビア内戦の片方の当事者を引き込むことでイスラエル主導のパイプライン構想に楔を打った。手をこまねいているアラブ諸国の指導者への批判はここには記されていないが、非アラブの大国に遅れをとるアラブ諸国の問題もやがてはクローズアップされてくるだろう。……

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