サウジがレバノン在住の国民に、即座に退去するよう指令を出した。サウジの対イラン・対ヒズブッラーの政策は緊迫の度を急速に高めている。
11月4日、サウジが多数の要人を拘束した政変と同日に、レバノン問題でも大きな動きがあった。この日、サウジのリヤードを訪問中のサアド・ハリーリー首相が辞意を表明したのである。ハリーリーは辞任の会見で「暗殺未遂」「イランの介入」を非難したものの、サウジに「言わされている」という印象は拭えない。
ハリーリーといえば、父ラフィーク・ハリーリー元首相以来、サウジの「お抱え」であった。そのハリーリーが、サウジで、ヒズブッラーと背後のイランを非難して、辞任を表明した。そしてそのまま帰国しておらず、同夜に拘束された要人たちと同じくリヤードのリッツ・カールトン・ホテルに軟禁されているとも噂された。こういった噂が全て事実とは限らないが、レバノン情勢にサウジが強い不満を抱き、息のかかった首相をいわば「解任」して強硬姿勢に転じたという印象は否めない。ハリーリーは7日に一度UAEに出国したとも報じられる。対イラン・対カタールで劣勢挽回を図るサウジ-UAE連合と一蓮托生の運命だろう。
11月6日には、サウジの湾岸担当国務相のサーミル・サブハーンが、「レバノンはサウジに宣戦布告した」と発言し、ハリーリー首相辞任後はレバノンの国家そのものを、ヒズブッラーやイランに支配されたものとみなして敵視していく姿勢を示した。サウジはレバノン・ヒズブッラーとの対決にイスラエルを引き込むという観測もある。サブハーンはワシントンを訪問して対レバノン政策で米国の支持を得ようとする見通しである。レバノン問題をめぐって概ねサウジ側に立ってきた米国や西欧にしても、ハリーリーを辞めさせて残ったレバノン政府全体と敵対していくという政策には内心賛同できないだろう。ハリーリーを辞めさせてレバノン政府と敵対すれば、ヒズブッラーの影響力がさらに増すだけではないか、という至極当然の懸念の声が早速出ている。とはいえ、米・欧の影響力は弱まっており、サウジとUAEのどのような無謀な動きでも追認する以外に方策がないのかもしれない。……