連載 > 政治

580

イスラエル・ハマースのガザ包括和平案が示すアラブ・イスラーム8カ国の台頭

2025年10月9日

 10月8日、ドナルド・トランプ米大統領が、イスラエルとハマースの和平協議の「第一段階の合意」を発表した。

 ハマースによる人質の解放と、イスラエルによるガザからの一定程度の撤退が行われる見通しである。ハマースが全ての人質を解放するか、イスラエルがハマース殲滅のための攻撃を停止するかは未知数であり、今後も戦闘が続く可能性はあるが、2023年10月以降のガザでの大規模な戦争において、イスラエルとハマースは停戦と和平に向けての曲がり角を曲がったと言える。

 9月9日にイスラエルが、ハマースとの仲介国であるカタールの首都ドーハを空爆したことで、ガザの和平協議は暗礁に乗り上げたと思われた。だが、それによって生まれた中東地域の反発をも取り込んで、トランプ大統領が和平協議仲介に新たな推進力を与えた。それによってもたらされる結果の妥当性や正義といった是非や理非をひとまず脇に置けば、トランプ大統領がガザをめぐる中東政治に、過去3週間で大きな変化をもたらしたことは確かである。膠着したガザ情勢の打開となる可能性のある出来事である。

 イスラエルとハマースの今回の合意は、9月29日にトランプ大統領がイスラエルのネタニヤフ首相との会談に合わせて発表した20項目の包括的和平案第一段階をなすものである。

 ネタニヤフ首相とのホワイトハウスの会談で示された20項目の和平案の元になったのは、9月23日にニューヨークで国連総会に合わせて開かれた米国とアラブ・イスラーム8カ国首脳との会談で示された21項目の和平案である。この8カ国とは「サウジアラビア、UAE、カタール」(湾岸アラブ産油国の主要国)と、「エジプト、ヨルダン」(イスラエルとの和平で先行した主要アラブ諸国)、そして「トルコ、インドネシア、パキスタン」だった。

 この8カ国との会談で、トランプ大統領はイスラエルによるヨルダン川西岸の併合を認めないと約束すると共に、国連総会の基調となった二国家解決の支持を再確認する動きに同調する姿勢に舵を切った。

 9月23日のアラブ・イスラーム主要国首脳との会談から、9月29日のイスラエル・ネタニヤフ首相との会談までの間に、トランプ大統領の包括和平案は21項目から20項目となり、イスラエルのガザ完全撤退を必ずしも義務づけず、無期限の駐留も可能にする文言に変えられた。これにアラブ・イスラーム8カ国からの反発も見られたものの、10月5日に発表された8カ国外相の共同声明は、トランプ大統領の外交努力を評価している。

 トランプの包括和平案で、アラブ諸国からはサウジアラビア、UAE、カタールの湾岸産油国が、そして非アラブのトルコ、南アジアと東南アジアのパキスタンとインドネシアがパレスチナ和平を巡る多国間の枠組みの主要な推進国として選ばれていることは、時代の変化を表す。……

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、私たちが「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する